うちの母はATMを使ったことがない。
キャッシュカードを1枚も持っていないのだ。銀行も郵便局も全部窓口を利用する。

商売をやっていたころは、よく銀行員を呼び出して
その日の釣銭用の小銭を持ってこさせていた強者である。
埼玉医大でも、私がつき添えない時は支払機ではなく窓口で会計しているらしい。
母が使えるのはPASMOと何かの拍子に作ったまるひろ百貨店のクレジットカードだけだ。
 

最近、母とよく行くスーパーがセミセルフレジになった。
タッチパネルも使えないので「もう買い物もひとりではできなくなる」と嘆く。
いやいや、レジは現金使えるんだからタッチパネルくらい覚えなさいよと思うがそんな気はないらしい。
 

夕食の時、「そう言えば電話帳もなくなるんですってね。
懐かしい人たちの電話番号も調べられなくなるのね」
と母にしては珍しく寂しそうに言った。母の知り合いの多さと長電話は有名だ。

そして母らしく言い放つ。
「スーパーも電話局(!)も、こんなにお金を持っている人に
お金を使わせなくするなんて、バカね!」

高齢者でも私なんかよりずっとIT機器を使いこなしている人は大勢いるけれど、
コロナの影響もあってICT化がさらに加速していくと、
楽しみを奪われる高齢者が増え、母の言うように事業者も消費者を逃すことになるのだろうか。

まあ、母が買うものなんてたかが知れているけれど。