「ジェンダー平等ってな~に?」女性+若者だれでも100人会議 の中で、
3人の女性がそれぞれ8分間のスピーチをしました。
私もそのひとり。
1. 私が離婚を考えた時 上野葉月(保育園経営・議員・シングルマザー)
2. 地方議会から見えた日本の政治と女性 田中まどか(元日高市議会議員)
3. 公設男女センターの非正規コーディネーター 古川晶子(はむねっと)
大層な題名でお恥ずかしいですが、意外と好評だったのでここに残しておきます。
お読みいただけたら幸いです。
2024.07.13
ジェンダー平等ってな~に?
「地方議会から見えた日本の政治と女性」
みなさん、こんにちは。今年の2月まで、ここから車で40分ほどの日高市というところで市議会議員をしておりました、田中まどかと申します。4月にあった日高市長選に出馬し、みごと負けましたので、現在は無職でございます。
私は正味12年間、市議会議員として活動してきましたが、私を議会に押し出したのは、本日代表も参加していますが、「みんなの会in日高」という、女性を意思決定の場に出そうという明確な目的を持った団体です。結成以来20年間に4人の女性を市議会に送った実績があります。定員16人の議会に同時に2人いた時期も長く、議会や市政に与えた影響は小さくないと自負しています。当選は叶いませんでしたが、県議選、市長選にも候補者を出してきました。普通の市民が集まってこのような政治活動を続けている団体は全国的にも珍しいのではないかと思います。
このように、私には強力にバックアップしてくれる団体があり、活動面でも精神面でも助けられてきましたが、日高市議会内における私の立場は、常に保守系多数派から抑圧と排除を受ける厳しいものでした。発言、発信、さらには質問内容や採決態度にまで文句がつけられ、2019年には問責決議、2020年には議員辞職勧告決議を出され、あまりのハラスメントぶりに2021年から裁判を起こし闘ってきましたが、一審二審につづき先月最高裁でも棄却されてしまいました。
このことについては話すと長くなりますので、お配りしたQRコードから、私の記事をお読みいただけたらと思います。
現在、議会ハラスメント禁止条例を制定する議会も増えている一方で、私のように裁判を起こしている議員が全国に何人もいます。それほどに議会内ハラスメントが各地で起こっているということです。地方議会における少数派・女性議員に対する抑圧・排除はなぜ起きるのでしょうか。
ひとつには、入ってきた異物を体内から追い出そうとするある種、免疫作用なんだと思います。長年同じような属性、同じような考え方の人たち、つまり年配の保守系の男性だけで意思決定をしていた場に、空気を読まずわきまえず、自分が持った違和感や疑問を平気で口にする女が現れた。今まで「あうん」の呼吸でうまくいっていたのに、いちいち説明を求められてめんどくさい。しかもそいつはSNSというわけのわからんものを使って、おれたちが何をしているか、何をしていないかを世間に広めている。やばいやばいというわけです。
二つには、変な嫉妬。仲間外れにされないように余計なことは言わないでいたのに、みんな言いたくても言わないで我慢していたのに、言ってしまえるあいつはずるい=羨ましい=妬ましい、という屈折です。
しかし、そのめんどくさい妬ましいヤツも、自分と同じく有権者に選ばれた議員であり、その後ろには多くの市民がいるという当たり前のことを自覚すれば、その意見も尊重せざるを得ないわけですから、いずれめんどくささにも慣れて、議会じたいが変わっていくはずです。
しかし、なぜかそうはならない。まるで学級会も経験していないのか?と思うほど民主的な話し合いができない。私の言うことをことごとく否定してくる。周り(傍観している議員や事務局)もそれをおかしいと言わない。選良と呼ばれる議員や公務員試験を通ってきた職員の集まりなのに、なぜ?いったいなぜ?とずっと考えてきました。
実はこの現象にも学術的な名前があることを、偶然新聞記事で知りました。「認識的不正義」というのだそうです。
「認識的不正義」とは、「自分の社会的地位や特権がマイノリティの抑圧によって維持されている人たちが、マイノリティの声をきくことで不都合が生じる場合、敢えてその話を理解しようとせず、無知・無自覚であり続けようとすること」「新たな概念や解釈やフレーズが、自分たちを脅かすものである場合、それを意図的に無視して既存の概念や解釈を維持し続けようとすること」だそうで、ニューヨーク大学の哲学者ミランダ・フリッカー教授が提唱しているそうです。
これは、選択的夫婦別姓や多様な性、多様な家族観、ジェンダー平等などに対する異常なまでに頑なな「俺たちの価値観は死んでも上書きするもんか」という一部の右派の政治家たちの態度と重なるものがあります。彼らはジェンダーという言葉さえ、男女平等というフレーズさえ拒否してきたではないですか。
ややこしいことに、そこにもう一つ問題が生じます。
そうやって不都合なことに無知・無自覚であり続けようとする集団、言葉を理解しようとしない集団に抗うのは、少数派・女性にとって消耗戦でしかありません。なので、消耗戦を回避し、無知集団の懐に自ら入って、身の安全を確保したうえで、その集団の中で権限のあるポジションに就くまでは戦略的に「わきまえる」戦法に出る女性も少なくありません。
どちら側にいたら安全か、どちら側にいたら得かを考えて行動する。でもそうは言えないから「自分の政策を実現するため」「こちらに正義があれば向こうにも正義はある」などと言い訳をして離れていきます。
さらには、気に入られ、引き上げてもらうためにその集団の意見を自ら代弁し、男性以上に先鋭化していくことも珍しくありません。杉田水脈氏や丸川珠代氏を見ていると苦々しい気分になりますが、それでもそうしなければ生き残れない政治環境、土壌というものが地方議会にも国政にもあるのは事実で、その環境じたいを変えていく活動が求められていると思います。
私のこれまでを「名誉の孤立」と呼んだ人がいますが、誰も孤立したいわけがありません。もっと民主的な議会にいたら、もっとまともな仕事ができたし、有益な妥協や歩み寄りだってできたと思います。
意思決定の場をもっと平らな場にするためにも、女性政治家を増やすこと、その女性を支援すること、そして、蓮舫さんのような物言う女は怖いなどという甘ったれたミソジニーが湧かないように、普段から職場や家庭、地域活動の場や学校で、誰の口も塞がずに議論や対話ができるようにすることが大切だと思います。今日のような場も必要ですね。
そんな努力を、私たちはあらゆる立場からしていきましょうと呼びかけて、私のお話を終わりにします。ご清聴ありがとうございました。
2024年7月13日 NWECにて
PRESIDENT Online 2024/06/25
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https://president.jp/articles/-/82886 ←文中にある記事はこちらからお読みいただけます